スパイダーマン3、シュレック2、パイレーツ3を
興行収入で追い抜き、
タイタニックが三ヶ月かけて到達した6億ドル突破の記録に
なんとたったの六週間で迫った挙句、
(歴代興行収入では
スターウォーズ、ETを軽々と超えている始末)
各方面からは五つ星の絶賛、
ジョーカーを演じたヒース・レジャーは
方々の「助演男優賞」を総ナメ、
アメコミ原作にしてはちょっと異常なんじゃないの?
と思えるくらい、記録の連立、満員御礼、
まさに「怖い」くらいのヒットを記録している本作。
ヒット云々は別としてさ、
でも、アメコミでしょ?と高をくくると
確実に痛い目に会います。
オープニングの六分間。
『ダークナイト』は
クリストファーノーランが監督する
新規バットマンシリーズ、
『バットマンビギンズ』の続編にあたります。
まずはバットマンの説明から。
バットマン、というと
スーパーマンに並んで
アメリカの大衆漫画、いわゆるアメコミの
代表的なヒーロー。
主人公のブルース・ウェインは
昼間は大企業の社長にして大富豪、
しかしひとたび、夜の闇が彼の姿を隠すと
正義のヒーロー、バットマンとして
悪漢相手に獅子奮迅
人知れず、街の平和を守っているのであった・・・!
とまあ、こんな具合の。
バットマンは特殊な能力が無い代わりに
うなるほどの金に物を言わせた、様々な道具を手に、
でも基本的には肉体一つで
悪人に立ち向かっていくわけです。
格差社会もビックリな、
庶民派な色男。もといコウモリ男。
極悪非道なやつらを相手に
バットマンは今日も夜を往く・・・!!!!!
シンプルです。
シンプルアメリカンです。
善が悪を討つ。
善は常に善で、
悪は常に悪であり、
そこのところが、善悪の境界が曖昧になってる
日本の漫画とかアニメとは大きく異なる特徴だなあと
やっぱりアメリカの漫画は単純だなあと
思ったら負け。
『ダークナイト』では
自警団として、本来なら賞賛されるはずのバットマンが
街の厄介者として扱われるところから始まります。
なにせ、法律上は無法者、
力に物を言わせて人を討つ彼が
本質的には、悪と何の違いがあるんでしょう。
おりしも、
新任の検事、ハービー・デントが
法の名の下に、正当な悪漢裁きを初めていました。
バットマンはいよいよ、
自分の正義には限界があるという事を悟ります。
時を同じくして、
マフィアによる資金洗浄事件が発生、
同時に、マフィアの金を狙った不可解な銀行強盗も。
捜査にあたる警察と検事は、しかし、意見がかみ合わず
却って警察内部の汚職が浮き彫りになる始末。
街そのものの正義が、腐敗し始めていました。
その頃、
マフィアの下に一人の男が現れます。
奇抜なメイクで真っ白に顔を染め、
耳元まで裂けた口を笑わせた男は、
『バットマンを殺す』と明言。
巧みな手練手管で罠を仕掛け、
人間の『正義』を嘲笑し、破滅させようとする彼、ジョーカーと、
『正義』の限界を知り、苦悩するバットマン。
加速する心理戦は壮絶を極め、
やがて街そのものを巻き込んでいきます。
『ダークナイト』がアメコミの域を超えた、と
大絶賛される理由は
この単純な善悪の二項対立に自覚的でありながら、
現実においてその実践は困難である、という
ヒジョーにシビアなジレンマを問題にしているからだと思います。
理想に対してシニカルであり、挑発的です。
善悪の境界とは曖昧なもので、
『ポンと一押し』するだけで向こう側に行ってしまう。
正気と狂気は、
あるいは
理性と本能は
紙一重な存在として対立している。
『ダークナイト』で描かれるのは
善悪ではなく、むしろそうした
人間性の二項対立、戦いです。
バットマンが負って立つ、理想としての善と
ジョーカーが突きつける、現実としての悪の
思想的なぶつかり合いは
勧善懲悪というジャンルの都合の良さへの問題提起でもあります。
『正義』とは何か、というテーマは
ヒーローものだからこそ、却って切実な問題なわけです。
しかし、
いやはや、
ハリウッドの本気を見た気がします。
全編に渡って張り詰める緊張感、
実力派俳優人の名演、
殆どCGを使わず、徹底的にリアリティを追い求めた演出、
様々なドラマが絡み合い、二転三転、
全く先が読めない物語。
特に脚本と役者人の演技は素晴らしかった。
ジョーカーを演じた、故ヒース・レジャーの演技が
本当に、本当に怖い。
夜中に見たから結構本気で怖かった(笑
ティム・バートン版のジャック・ニコルソンとは違った狂気に溢れてる。
悪役としては、ダースベイダーやハンニバルレクターに並ぶんじゃないでしょうか。
ガチです、この映画は。
超ド級のエンターテイメント。
ハリウッドを見直した。